四 二十一世紀の大分の創造に向けて

 1 太平洋新国土軸構想の展開を中心にして

 ここで今回三月末に閣議決定されました新しい「全国総合開発計画」の考え方についてお話しします。今までは一軸一極でした。高度経済成長の時代には、太平洋ベルト地域、いわゆる東京から名古屋を通って大阪から北九州に至る、この太平洋ベルト地域にあらゆる産業を集中させて、ここに集中投資をして日本の高度成長を実現した。これが今までの国土開発計画の基本にありました。太平洋ベルト地域構想です。
 今度の二〇一〇〜二〇一五年をめざす新全国総合国土開発計画では、この考え方 とは違った思想が盛り込まれました。これまでの一軸一極の国土構造ですと、東京から大阪を通って福岡に至る道路で、例えば先般のように阪神地域に地震が起こりますと、九州と東京との間は完全に分断をされる。新幹線は姫路で折り返し、東京からは京都で折り返しとなります。大分から物を運ぶのにもこの道路は駄目ですから、大阪まで持っていって大阪から阪神まで持っていかなくてはならないということで、この一軸一極では地震などの異変が起こった場合にいかに弱いものであるか。橋本総理もつくづくそういうことを私に述懐したことがあります。
 従ってこれからは、多軸多極の考え方を取り入れて、一つは伊勢湾口から紀淡海峡を通り、豊予海峡から九州に渡り沖縄に至る太平洋新国土軸(沖縄から九州中南部、四国、紀伊半島を経て伊勢湾沿岸に至る地域およびその周辺地域)、それから日本海国土軸(九州北部から本州の日本海側に至る地域およびその周辺地域)−これは環日本海経済圏(ロシアから北朝鮮を含む)、それから北東国土軸(中央高地から関東北部を経て、東北の太平洋側、北海道の日本海側に至る地域およびその周辺地域)、それに西日本国土軸(太平洋ベルト地域とその周辺地域)、この四つを入れて新しい国土軸を多軸多極にしようという方法が出ています。豊予海峡架橋について十年越しの要望活動が実って、ハッキリ明記されることができました。

 2 「適正共生社会」の実現をめざして

  (1)  適正人口を考える

 新全総では、これからの日本列島は美しい景観の中に豊かな生活が送れるガーデンアイランドを目指すとしており、「自然」と「産業」と「文化」が共存できる地域を「多自然居住地域」と言っております。従前の太平洋ベルト地域には東京、名古屋、大阪、福岡などの大都市が並び、ここに恐らく日本の人口の六割以上が集中しています。この太平洋ベルト地域の開発理念は、「都市化・工業化・集中化」でした。しかし、今度の新全総でいわれる太平洋新国土軸沿線は「多自然居住地域」と位置付けられ、豊かな自然の中で人間が立派に生存でき、また自然と人間の共存できる地域であると言っております。私は「多自然居住地域」というと美しい自然ばかりあって、道路もけもの道のような道路があるというような印象を受ける。私はこの概念をもっと前向きにとらえ、「適正共生社会」の実現と考えています。どういう意味かと言いますと、これからの太平洋新国土軸沿線の地域は、今までの太平洋ベルト地域と違って、大きな都市でない地方都市、いわゆる適正人口規模の地方都市、また農村地域です。農業・林業・水産業を主軸とする地域です。そんなに大きな人口はなくてもそれぞれ適正な人口の中で、美しい自然と一次・二次・三次産業と文化が共生をしていくような地域を創造していく。私はこれが「多自然居住地域」の理念であると考えております。
 また、これまで国は毎年「豊かさ指標」(表三)を発表しておりますが、平成十年の指標では大分県は昨年に続いて総合では全国十四位で、九州では六年連続トップです。適正共生社会は、この豊かさ指標の高い地域を創造し、物も豊か心も豊かな地域づくりをしようとするものです。
 大分県では具体的には国東地域と大野・竹田直入地域をモデル地域にして「適性共生地域」(図一)というものの具体的構想を、目下作成中です。
 私の基本的な考えを申し上げますと、まず、大分県全体を「適性共生社会」と考えますと、大分県の適正人口はどのくらいのものであろうか、ただ人間が増えるだけでいいというものではありません。しかし人間が全然いなくなればその町は崩壊するわけです。現在の県の人口は百二十三万人です。しかしご存知のように、少子化現象は大分県だけではありません。日本の特殊出生率、いわゆる一人の女性がどのくらいの赤ちゃんを産むかというと、二人を切って一・七人ですから人口は減るのは当然です。日本全体が恐らく増えることはありません。減っていくことだけは間違いない。
 大分県の人口も今のままの出生率でいきますと、九州で一番出生率が低い県ですから、厚生省資料によりますと、二〇二〇年ごろになると十二万人減少するということになっています。しかし、これからは新しい企業誘致、例えば、杵築市に立地したキャノンマテリアルでは千七百人くらい雇用するとか、また日田市に誘致したサッポロビールにもまた新しい雇用が生まれる。また中津市のダイハツの誘致や別府市に新設される立命館アジア太平洋大学では学生が三千二百人ということですから、これからの大分県には、新しい大学や研究機関、それからハイテク産業、環境と共存する産業、こういったものを考えると、大体今の人口が百二十三万人ですから、百二十万人前後を適正人口と考えていいのではなかろうか。
そしてそれぞれの町村で、「自然」と「文化」と「産業」とが共存していくというようなことをこれから考えていかなくてはならないと思っているところです。

  (2)  定住人口に交流人口をプラスする

 従って、これからは定住人口と合わせて交流人口を考えることが必要です。例えば今、湯布院町は非常にお客さんが増えて観光の街として活性化しているとよくいいますけど、あそこの人口は減っている。交流人口の増加が町の活性化の役割を担っているといえましょう。また、観光客が非常に増えている久住町、今アンケートを取ると、もう一回行きたい観光地のトップは久住です。久住には百五十万人以上のお客さんが行く。これからはこのようにそれぞれ大分の地域は交流人口が増えていく。例えば、別府のコンベンションホールに今一年間三十六万人の利用者がいます。これを一日に換算すれば毎日千人、別府の人口が増えているというのと同じことになります。これからは定住人口と交流人口をプラスして、大分の人口はどれくらいであろうかということを考えていかなければいけない。観光というのは昔でいうとお客さんがやって来て、そこで楽しんで一杯飲んで温泉に入って帰るのが観光でした。これからは、従前のような観光に加えて、国際交流や一村一品を勉強する学生さんもいるし、留学生もおりますし、また、グリーンツーリズムを楽しむ人もあるということで、これからは観光という概念だけでなくて、文化・経済面での交流人口が増える。交流人口促進事業で各地域にいろいろな文化施設、観光施設をつくる。また道路がよくなると、そこに「道の駅」や県独自で「里の駅」をつくる。そこに新しい産業ができる。定住人口と交流人口を加えていって大分県の適正人口というのを考えていかなければならない。そのような意味が「多自然居住地域」ということです。日本全国全体が庭園列島(ガーデンアイランド=庭園のごとき景観を備えた町づくり)にしようというのが、今度の新しい全国総合計画を貫く考え方です。従ってこれからは集中化・過密化ではなくて、こういった適正人口の中に、ゆったりした文化を享受できる町づくりということを頭において、定住人口と交流人口を増やしていきたい。
 そのためには、どうすることがあるかということで三つばかり申し上げます。

  (3)交通体系の整備が急務

 第一は、これからは定住人口・交流人口を増やしていくためには、交通体系の整備が重要です。

 これは二十一世紀の「豊の国の道づくり」構想としての地図(図二)です。大分から日田を通って長崎に行く九州横断自動車道は全線開通しています。大分から中津を通って北九州に行く道路についても、北大道路で大分から中津まで一時間ですが、東九州自動車道を予定している部分がまだちょっとできておりません。中津バイパスのところです。これを整備して北九州につなげなければなりません。それから東九州自動車道は、大分から津久見まではすでに工事進行中で、二〇〇一年までには供用開始となります。現在施工命令の出ているのが、佐伯・津久見間です。これは今から工事が始まります。今年の夏ぐらいには起工式にこぎつけたいと思っています。佐伯から蒲江までは今年中に施工命令を出してもらいたいと思っています。これができると、いよいよ残りは蒲江から延岡まで行く道路です。国幹審(国土幹線道路整備審議会)待ちですので、早い時期に国幹審を開催してもらうよう国に要望しています。大分から津久見までは二〇〇一年、津久見から佐伯が二〇〇八年の国体までにできればいいと思いますが、もうちょっと時間がかかるかもしれません。これからは大分から竹田を通って熊本に行く中九州横断道路です。大野・千歳間は今環境調査をやっていて、近く幅杭を打つ段階になります。大野から竹田までの間が調査区間、これを早く整備区間にしたい。犬飼バイパス、大分南バイパスを進めます。もう一つは国東半島の道路です。徳山からフェリーで竹田津を通って、真玉から豊後高田に至る広域交流道路を整備する。この道路が東九州自動車道につながり、また山口と大分を結ぶ第二関門橋ができますので、ここに山口、大分、福岡を結ぶ新しい経済圏ができます。これによって物流が早くなりますので、この道路をこれから高規格に格上げしたい。それから中津港に行く道路を高規格道路として延長する。中津・日田間では今、耶馬渓・本耶馬渓間は整備区間です。日田にはサッポロビール、中津はダイハツが来るわけですから、この中津・日田道路をさらに延長して、日田から前津江、中津江、上津江を通って中九州横断道路に結びつく。もう一つは九重のインターチェンジと中九州横断道路に結ぶ広域交流道路。今までの大分県は、大分市を中心に放射状の道路でしたが、今度は循環系道路ということを考えております。現在は国道10号線が南北を貫く幹線道路ですが、東九州自動車ができあがるまでの間は、三重町から宇目町を通って延岡市に行く国道326号が代用できます。今年県境まで開通しました。竣工式に行きました。宇目の唄げんか大橋のそばに「道の駅・うめりあ」ができていて、今、「うめりあ」は非常にお客さんが増えております。326号ができたおかげで三重町も人口が若干増えました。この道路で行けば、10号を野津町経由で行くよりも非常に早いわけです。これが延岡までに完全に通じると、恐らく大分・宮崎間が三時間半かかっていたものが三十分くらいは短縮になると思います。いずれにしても、これも国から公共事業の重点投資、特に景気対策を頭において重点的に実施してもらわなくてはなりません。そしてこれから新しい産業をこの沿線上に張り付けていかなければならないと思っております。

  (4) 新しい環境問題を考える

   ア エコオフィス運動への取り組み

 これから「自然・産業・文化」の共生を考えていくわけですから、大分県が「適正共生社会」を実現するためには、新しい環境対策を進めていかなければなりません。今、生活環境部で「環境基本条例・環境影響評価条例・環境保全条例」、この三つの基本条例を今年から来年にかけて制定する準備をしています。「隗より始めよ」ということで、具体的な目標を設定して県庁内の各部局でのリサイクルや省エネを進める「エコオフィス運動」に取り組んで、国際標準化機構(ISO=International Organization for Standardization)の環境マネジメント国際規格「ISO14001」の規格認定を取ることにしたい。今、日田市でも取得に向けた取り組みをしていますし、全国的に行政のオフィスでは千葉県白井町、新潟県上越市など三自治体が取得しています。県庁舎で取得をめざすのは九州では大分県が初めてになると思います。
 ISO14001の規格認定を受けるためには、具体的にいいますと、新潟県の上越市の例で見ますと、省エネルギー、省資源およびリサイクル(廃棄物の減量化)の推進では、平成十二年度までに電気使用量を六・四%削減する。同年度までに都市ガスの使用量を六・九%削減する。庁用車や職員の通勤車輌による燃料の使用量を削減する。このほか重油の使用量、灯油の使用量、事務用紙の使用量を削減する。公共事業における工事材料は使用の削減に務める。一般廃棄物も削減する。本庁舎においてはリサイクル率を平成十二年度までに三〇%にする。公共工事における建設廃棄物はリサイクルに務める──などとこういったいろいろな指標を作り実施していくわけです。これから「適正共生社会」地域でそれぞれの市役所また町村の役場にもエコオフィス運動をやっていただきたい。これからまず県庁が規格認定をめざしてやっていきたいと思います。

   イ ダイオキシン問題の根本的な対策を考える

 これからの大きな問題はダイオキシン対策です。特に、小学校、中学校のゴミの焼却から起こるダイオキシン対策を至急講じる必要がある。かねがね私は、大分に工場のある新日本製鐵にお願いして小型の溶融炉を作って、高度な熱で燃やすのが一番早い。そこでモデル的に無分別にゴミや産業廃棄物を全部溶融炉で燃やすというモデル設備の導入を新日鐵と県とで技術専門家チームをつくり検討してもらいたい。新日鐵もダイオキシンに対応する溶融炉の開発をやっているようですので、県も協力して広域的にゴミの焼却等をやっていけば解決できるのではないか。これから、「適正共生社会」実現の一環として、このダイオキシン対策として焼却炉の導入をするなど産業廃棄物問題についても解決しなければならぬ問題が多い。産業廃棄物問題については現行の法律では、機関委任事務ですから産業廃棄物処理場が一定の条件に合うと県は認めなければなりません。認めた結果、その産業廃棄物の業者へ改善命令を出しても言うことと聞かないでとうとう県が代執行をやったという例が日出町に出ました。こういうことになって、後で費用を請求してももうその人は支払い能力がない。従って、あとは告発というような手段に訴えるしかない。産業廃棄物問題も大変難しい問題です。市町村長さんも非常に頭を悩まされております。しかし、これは必ずどこかにはつくらなければならないものです。産業廃棄物問題は、経済の発展とともにどうしても解決せざるを得ない問題です。
 この問題については、各郡単位で公共関与の産業廃棄物処理場をどうやってつくっていくかということを考えないと、発生者責任で、産業廃棄物の発生者と産業廃棄物処理業者だけに任せても、結局日出町のようなケースになる恐れがある。今年度の予算では、監視員増員など監視体制はできましたけども、将来は広域的処理が行えるような処理場を公共関与でつくっていかないと、今日のような問題が起こりかねない。現状方式ですと反対運動が起こると、それに対して知事が独自の権限で判断できない。今後は、県と市町村長と一緒に対応ができるシステムを作りたい。
 この問題についても「適正共生社会」をめざす大分県でモデル的に特定地域で根本的な対策方法を考えていかなければならないと考えています。

   ウ 一次・二次・三次産業の振興と後継者や雇用の問題

 第二に、一次産業である農業・林業・水産業の後継者の問題です。農業については、大分県はこれから農業を企業と考えて、五千人の中核農家というものを「認定農業者」としてこの方たちを中心にやっていこうと考えております。これは農業基本法の考え方です。大分県は認定農業者四千五百人くらいまではいきますが、そこからは厳しいが、いずれにしても認定農業者の農家が中核になって、高い付加価値のものを作っていけば、後継者が育っていく。所得の上がっている力の強い農家には後継者が育つ。この認定農業者を中心にこれからの農業を進めていきたいと思っています。
 林業の大きな問題は不況対策です。現在、木材価格は住宅建設数の減少(前年比八四%)もあって一七%ダウン、販売額は一七・五%の減です。  県としては、県産材の販路拡大のため、今年度予算で県産材を多く使った「おおいたの家21」の設計費補助や過疎地域優良住宅建設補助金制度などの措置を講じています。特に間伐促進のためふるさと林道の新規採択や作業道の延長なども講じていますが、これからの問題はやはり間伐を進める人材の確保、特に林道や山を守る林業労務者が少子化現象、都市化現象で確保できなくなることです。また農村にお嫁さんが来なくなる。また水産業においても同じような問題があります。従って、これからは日本全体の少子化問題解決にアジア各国の方と人材の交流ということが不可欠になると私は思います。
 現在、大分市で成型加工業をやっている山村君子さんは、中国・江蘇省呉県で約四千坪の土地を借りミニトマトの栽培をしていますが、地区農民からも好評で、さらに面積の拡大を計画中です。これからは、大分県の農家の方が中国で農業を営み、中国の農家が大分で農業経営を共同でやる時代がやってくる。
 中国の経済成長率は七%前後で人口も一四億人が一七億人に増加するといわれています。食糧自給がこれからの中国の最大の問題です。私は二一世紀には日本の農業は花形産業といっています。日本全体としては少子化・高齢化で農家の若者は減少し、戸数も減少するでしょう。中国・フィリピンなど東南アジアから農業をやりたい人が日本で農業をやらないと過疎地域では日本人の若者はいなくなり、農業の担い手が不足する。
 林業についても同じです。私は一九九六年マニラでマグサイサイ賞を受賞した際、ラモス・フィリピン大統領にお目にかかり、大統領から「大分の林業をフィリピンの若者に勉強させたい」と要請を受け、林業研修員を三ヶ月間四度受け入れ感謝されました。将来はフィリピンの林業技術者が日本に定住し、間伐を行う時代が来ると思います。そうでないと日本の森林を守る人材が地域からいなくなる恐れがある。
 立命館アジア太平洋大学は二000年、別府市に開学しますが、ここは、一学年八百人のうち四百人は東南アジアの人を予定しています。これらの学生が経営学や「アジア太平洋学」を勉強して、国に帰って中堅の経営者になっていくわけですが、同時にこれからは、この大学を出た学生さんが、願わくば別府や大分に居住して、日本人のお嫁さんをもらい、別府の旅館の経営者になるとか、また大分県の過疎地域の商店街の店主になってもらう時代が来る。かつてのブラジルが、日本人移住者がコーヒー園をつくり、ブラジルの発展を支え、また国会議員になられた方もいる。ブラジルの陸軍将官は熊本出身の二世の方です。アメリカにおいても多国籍企業やシリコンバレーのソフトウェア会社にはインド系アメリカ人でノーベル賞をもらった方がいるし、韓国人もいれば中国人もいるということです。これから一民族一国家ではなく、こういった農業・林業・水産業・中小企業は、アジアとの人材交流というものを頭に置いた農業・林業・水産業を考えないと、特に少子化現象が進む日本、特に過疎地域では大きな問題になろうと思います。日本全体の人口は減っていっても、大きな都市には人口はかなり集まるでしょう。従って問題はマクロで考えないでミクロで考えないといけない。大分県においても、大分県の人口が減るといっても大分市の人口はそんなに減らない。けれども場合によってはこのままですと若者がいなくなる農村が出てこないとも限りません。従ってわれわれはやはり農業というのは地域構成産業、地域の存立を支える産業ですから、農業がなくなればその町はなくなる。もちろん、林業、水産業を含めてですが、そういう産業ですからいわゆる所得補償制度(デ・カップリング制度)、農業者や林・水産業者が人手不足で所得が確保できないときは国が補償する制度というものも、適正共生社会の中で考える必要がある。その町では農業が中心産業だという町村もたくさんあります。そこの農業がなくなればその町は崩壊するわけです。中国では地場産業を「郷鎭産業」といいます。郷は村、鎭は町ですが、日本流に解釈すると郷土を鎭める産業です。その地域になくてはならぬ産業を助成していく必要があります。もちろん、国の所得補償に頼らず自分の力で自立できる農業をつくることが大切ですが、ヨーロッパには直接補償を実施しているところもあります。
 次は、二次産業であります。ハイテク産業が二0一0年に四十七都道府県でどこの県にどのようなハイテク産業が入ってくるかという見通しが「THE21」という雑誌に出ています(表四)。二十一世紀(二0一0年)になっての先端産業の売上高ランキングがあります。一番は東京です。東京が十六兆二千億円、次が神奈川県、それから大阪、四番が大分県で二兆七千億円です。五番目が福岡、六番目が群馬です。現在工業出荷額では二十七位の県ですが、急上昇して福岡を抜いています。情報サービス業は遅れていますが、半導体は三位の強みを発揮、先端技術産業比率では全国一です。これで九州の福岡一極集中も是正されることになるだろうと非常に楽観的な見通しが出ています。こんなにうまくいくとは思いませんが、こういう見通しもあります。従って適正共生社会の中において、環境の問題は特に重要な要素であるとともに一次・二次・三次産業、特に二次産業の振興も大切です。大分県はこれからも非公害型の若者定住に役立つ企業誘致を進めます。

 最近の新しいところでは、日田市にサッポロビールが五月十二日に起工式、杵築市にキヤノンマテリアルが四月八日に起工式を挙げましたし、豊後高田市に東海ゴム工業(株)が立地し、中津市に平成十六年ダイハツの立地が予定されています。キヤノンマテリアルは初年度四百人、最終千七百人、サッポロは百五十人、平成十六年中津市に操業予定のダイハツもかなりの人員を見込めます。こういった先端産業の立地を小さな町にも考えていって、全国的にも第四位になる可能性を持っている県ですので、こういったところにも雇用の場をつくり若者の定住を図っていくようにしたいと考えているところです。
 また立命館アジア太平洋大学は四年制で三千二百名の大学生が別府市に住むことになります。今年四月野津原町に開学した看護科学大学は三百四十名です。別府市や野津原町は次の国勢調査で人口が増加することでしょう。大学、研究所の誘致は若者定住に寄与しますので積極的に行いたいと思います。  また過疎地域の商店街も大店法の規制緩和によって影響も受けることが予想されますが、直川村や今年度は清川村で行われている共同店舗方式に県も助成し、地場商店街の活性化を図っていきたいと考えています。
 推計値で見れば大分県の人口は二0二0年に十二万人減少という見通しもありますが、私は企業立地や大学の開学誘致で若者定住が図られれば適正人口の確保は可能ではないかと考えています。そのためには若者定住のための文化施設、スポーツ施設などを今から整備しておくことが必要です。大分市の「オアシス広場21」の県民文化ホール、スポーツ公園などはそのための施設です。

   エ 文化活動は大きな活力になる

 三番目は文化の問題です。今年の十月には文化の国体といわれる国民文化祭が大分で開催されます。これから二十一世紀になると、経済の成長がゼロになるか、せいぜい一〜二%ということですから、経済が日本全体の活力を呼び起こす力はだんだん衰えてきて、文化活動が一番大きな力になると、私はかねがね申しております。文化行政には二つの側面がある。文化する人材の養成、文化を鑑賞する機会の提供です。大分県では「一村一文化」、それぞれの地域において伝統の文化を守り育てる、また新しい文化を創造する。国民文化祭の開催を契機に大分県の「文化立県宣言」を考えたいと思っております。この宣言は行政主導ではなく民間の人を中心に提案してもらいたいと考えています。そしてこれからは文化施設の活用または文化人の養成、こういったことに力を入れなければならないと考えています。そういう意味において新しい大学や研究所の立地、また文化ホールや美術館の建設などは若者の定住にもなるし、文化活動の促進にもなり、文化立県の姿を確かなものにすることができると考えているところです。

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