2002.5.7

キリンのおもしろエピソードを4回にわたってご紹介します。

<第4回>
キリンの出産ドキュメント(後編)

 <担当>角 健吾

「スゥーハァー」「スゥーハァー」と深い呼吸を繰り返しています。「スゥー」と、この日一番深い呼吸をした瞬間、何の抵抗もなくすっと赤ちゃんが生れました。

一瞬の出来事でした。

 ミズキから、羊膜に包まれた命が誕生した瞬間です。時には、動物の世界でも親が子どもの面倒を見ないことがあるのです。ミズキが母親として子供の面倒を見てくれるだろうか?私達は祈るような気持ちで見ていましたが,出産後の疲労のせいか、なかなか羊膜をとってくれません。もちろん、膜のついたままの赤ちゃんは、動きません。そばに行って羊膜を取ってあげたい気持ちになりました。


生まれた直後のキリンの親子

 しかし、私が羊膜を破ってしまうと子どもが呼吸をはじめても、母親は自分の子どもだと思わなくなることがあります。手助けができない自分になぜだか腹が立ってくるのです。その状況が長く続いたような気がします。実際には、ほんの1分ぐらいの時間だったのかもしれません。
 突然、モニターに映しだされたミズキの行動に変化があらわれました。首を大きくしたに向け、我が子を包んでいる羊膜を優しく取ってあげたのです。モニターからでは、子どもの呼吸は確認できません。でも、赤ちゃんの細い首が上下に動いているのがわかります。呼吸をしています。ミズキは我が子の傍に立ち、濡れた細い首を、いとおしそうに舐めています。優しい母親の目でした。

 野生の草食動物は外敵に襲われないように、生まれてまもない時間で立ちあがります。ヨロヨロしながら必死に立ちあがろうとします。立ちあがれば倒れ、また立ちあがる、その繰り返しです。お母さんのおっぱいを探してお乳を飲もうとしますが、お母さんのおっぱいの位置がなかなかわかりません。このお乳(初乳)が生死を決するくらい重要なのです。お乳を飲むことで、赤ちゃんは免疫力が高まり体を作ります。病気に強い体を作るために大事なことなのです。
 しかし、今回の赤ちゃんは立ち上がりに30分を、初乳を飲むまでに1時間を要しました。ここまで来て、やっと安心できます。他のキリン担当者に、「初乳確認しました」と無線で報告しました。
 この報告を飼育担当者は心待ちにしているのです。 現在、この赤ちゃんはすくすくと育っています。皆さんの前にデビューするのは、もう間近です。出産と言う自然の掟の前では、無力な自分の姿がそこにありました。でも、私の中に無力感が残っているわけではありません。
 私はこの出産を見て、必死に生きようとする赤ちゃんの姿と新しい命のすばらしさや感動が心に残っています。

おかあさんのお乳を飲む赤ちゃん。ミズキもお母さんです。

 


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